日本労働評議会 高知県本部

副学長がパワハラ!東北大の特任助教からの労働相談

労評宮城県本部の活動を報告します。


発端は嘘の求人。研究職として雇ったのに研究をさせない!?

20194月、Tさんは、東北大が主幹大学をつとめるEarth on Edge (EoE)プロジェクトの“特任助教(研究)”として採用されました。東北大の特任助教には、主に担う業務によって、“研究”“運営”“教育”という3種類の雇用形態があり、Tさんは研究職を希望していたため、この求人に応募することにしたのです。

 

しかし、実際に指示された業務は運営業務がほぼ全てで、研究をすることはできませんでした。

 

研究の時間がとれないことは、Tさんにとって大きな意味があります。

まず、Tさんは研究者として、EoEの中でキャリアを積もうと考えていたのにそれが叶わなくなりました。だからと言ってすぐ辞めれば経歴に傷がつき、また、専門が細かく分かれている研究キャリアの特殊性から、辞めたところで自分に合致する求人はそうそう見つかりません。Tさんが研究者としてやっていく上では、今回の件が大きな時間のロスになり、将来設計を狂わせてしまいました。

ほかにも、Tさんが代表研究者(責任者)となっている科研費研究(研究者の自由な発想に基づき日本学術振興会から競争的資金を獲得してなされる研究)にあてる時間がとれず、研究者としての信頼を失う危機にも直面しました。

 

しかも、のちに副学長の発言から明らかになったことですが、“特任助教(研究)”として雇ったのは意図的なものでした。“特任助教(教育)” “特任助教(運営)”には裁量労働制が適用されないのに対し、“特任助教(研究)”の場合、裁量労働制が適用され残業代を払わずに済むからと、あえてこのような求人にしていたのです。まさに若手研究者を物として扱い、その未来を潰す行為です。

 

この契約の問題は、明らかな違法行為であり、一般的に言っても許されることではありませんが、それに加えて、まだ若い研究者であるTさんにとっては、研究者としてのキャリアや生命がかかった重大な問題とも言えます。

 

契約違反を指摘するとパワハラが始まる。Tさんは適応障害を発症。

 Tさんは、副学長はじめ、上司に対して、業務内容が契約と違うことを何度も指摘しました。

 

すると、複数の上司から、「君は研究職じゃない。」と契約内容を無視したうえで「スペック合わなければさよならも言える。」と解雇を示唆されたり、「(今の職のままでは)事務補佐員的な仕事になっちゃうんだよ。研究者としての実績が残せなくなっちゃう。」「だからそうなったときに研究者として非常にネガティブだよなと思ったんで。」「今の仕事そのまま続けたほうがいいか悪いか。」と退職勧奨をされたり、ということが頻繁に起こるようになっていきました。

 

その中でTさんは大きなストレスを感じ、心身にも不調をきたすようなり、適応障害まで発症してしまいました。副学長からのメールを開こうとするだけで動悸がしたり、夜も眠れませんでした。

 

Tさんの研究を妨害する副学長

 2020年2月、Tさんは、東北大内の教職員組合での団体交渉を行い、ようやく、研究職として働くことを上司に認めさせることができました。その頃には任期3年のうち、1年が経とうとしていました。

 

 すると、今度は、提出した研究計画がEoEプロジェクトの趣旨とずれているとして、研究計画を副学長が受理しないということが起きました。Tさんは何度も直して提出しましたが、不受理が続きました。

 

さらに研究進捗レポートの提出も催促されるようになりました。計画書が受理されないうちにレポートの提出とはどういうことでしょうか?しかし提出しないでいると、仕事をさぼっているような扱いをうけるため、Tさんは、自分なりに研究を進め、レポートを提出しました。しかしこれもずれているとして不受理。どこがずれているのか聞いても教えてくれず、Tさんが自分なりに直して提出しても不受理の連続で、研究を進めたくても進められないTさんは先が見えず、さらに追い込まれていきました。理する気がない計画書やレポートを何度も提出させ続ける理由は、悪意以外に考えられるでしょうか?

 

さらに追い打ちをかけるように、副学長は、レポートを提出しないことを理由として、Tさんを懲戒委員会にかけました。Tさんは、懲戒委員会の場で、上司からハラスメントを受け続けてきたことやレポートを提出しても受け取ってもらえなかったことなど事情を説明しましたが、考慮されず、厳重注意という処分を受けることとなりました。

 

労評はTさんの受けてきた数々のハラスメントと闘っていきます!

 副学長のハラスメントは、雇用契約違反から始まり、労働力として思い通りに使えないとなると退職勧奨というパワハラをし、それが上手くいかないと陰湿な方法で研究を妨害するアカハラをし、最終的には懲戒委員会で厳重注意の処分までおこなってきました。

今回の件でTさんが厳重注意を受けるのはおかしな話であり、本当に公正な調査や審議が行われたのか疑問です。この件も、優位な立場を利用したパワハラと言えるかもしれません。

 

 一連のパワハラには複数の上司が関わっていますが、その中心と言えるのは、現在の副学長(2019年当時は研究科長)です。Tさんの入職からの経緯を見るだけでも、副学長が、使用者と労働者、副学長と特任助教、という立場の差や権力を利用して、若手研究者を良いように使おうとしているのが見えます。

 

 このような環境では、Tさんのように社会のために研究をしたいと考える研究者がつぶされていってしまうのであり、労評としては、この状況を許すことはできません。研究者の方が活き活きと研究することができる環境をつくるためにも、Tさんとこの問題に一緒に取り組んでいきます。